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2012年1月

2012年1月29日 (日)

伝えることの難しさ~原発賠償問題に関して~

 2012年1月26日、原子力損害賠償紛争解決センターが提示した和解案を東京電力が蹴りました。

 原子力損害賠償紛争解決センターとは、原発事故の損害賠償に関する紛争解決のために、政府が2011年9月に設置した紛争解決機関(ADR)です。原発被災者弁護団のひとりとして、ADRへの申立1号事件(9月1日申立)に関わってきました。

 

詳しくは「原発被災者弁護団」ホームページ(http://ghb-law.net/)に譲りますが少しだけ解説と感想を述べます。

 1号事件のセンター和解案(12月27日に提示)は、主に5つの特徴があります。

①    東京電力が頑なに拒んできた避難指示区域内の財物損害(建物不動産を含む)を評価して支払うよう求めたこと
②    原子力損害賠償紛争審査会が出した中間指針で示された慰謝料額は最低限の目安であり、個別事情に応じてそれ以上の額を認め得るとして、実際上回る金額を提示したこと
③    被害の見通しがつかないことに配慮して、現時点で損害額を確定するのではなく、内払いとして支払うべきとしたこと(清算条項は入れない)
④    東京電力が既に支払った仮払金は後に清算することとし、今回の和解で控除しないとしたこと
⑤    弁護士費用として全体損害額の3%を認めたこと

 この和解案はこれらを全て呑むか、蹴るか、すなわち○か×かということでセンターから検討を求められたものです。弁護団(申立人)側は議論を尽くした上で提示された慰謝料額や弁護士費用(5%を要求していました)の不満がありつつも○と回答しました。○と回答できた一番の理由は、財物喪失、慰謝料について今後追加請求できる余地を残す内払い(③の部分)とされたからです。実はこの内払いの提案こそ、今回の原発事故被害で被災者を早期に救済する強力な武器であり、また当該和解案の真骨頂ともいえるものでした。

 提示された額で納得するか、逆に納得せずに裁判まで提起するかどうかという厳しい選択を迫られることなく、賠償を得られることになるからです。もし清算条項を入れることになれば、未だ避難生活が続き、帰宅できるかどうかも分からない中で、事実上妥協を迫られることになります。特に慰謝料額については、何をもって納得するか、という判断は本当に難しいものです。というか、中間指針で示された慰謝料額は低額すぎて、それをベースにした和解案は法律家から見ても本来納得し難いものです。かろうじて内払いとするからこそ、精算条項を入れないからこそ受諾できるわけです。

 しかしながら、東京電力は、センターの仲介委員がこのような事情に配慮し、苦心して(おそらく)編み出したこの和解案を「蹴った」のです。②、③、④について応じられないとしたのです。自ら示す「5つの約束」においてセンターの和解仲介案の尊重を約束していたにも関わらずです。

 あえて「蹴った」と繰り返したいのには実は理由があります。

 

弁護団では東京電力の回答を得て、即記者会見を行うとともに抗議声明を出しました。徹頭徹尾怒りの抗議をしました。

 

しかし、実際報道された記事を見ると、東京電力が不動産喪失分の損害を認めた(実際には建物分だけ。土地は解決されていない。)ことを強調するもの、東京電力が「全額受諾」したとか「応じるとの回答をした」とするものなどが圧倒的に多く、実際には和解案そのものについては要するに「×」と回答したのだということはほとんど伝えられませんでした。申立人側が何に不満を持っているのかを正確に掲載してくれるところもほぼ皆無です。中には、読み方によっては、申立人側が東京電力の受諾にも関わらずまだ駄々をごねているように受け止められかねないものもありました。

 

申立人ご本人がどれほどの勇気をもって先陣を切り、また社会的な意義を理解して取材に協力しコメントを発表してくれたかを思うと残念で仕方ありません。

 不動産(建物)の喪失を損害として評価されたこと、それを認めたことの意義を否定するつもりはありません。特に避難指示区域の方にとっては大きな一歩であり、生活再建のための希望の光になり得たことは間違いありません。そういう意味では、各報道機関が財物喪失の受諾を大きくとり上げたこと自体はありがたいと思っています。

 が、しかし、できればもう一歩踏み込んで、今回の回答の本質的な問題をとりあげて欲しかったのです。

 重ねて述べますが、センターの1号事件についての和解案の真骨頂は精算条項を入れずに一部内払いを前提とすることにあります。一見、和解案金額の大半を東京電力が認めたのだとしても、精算条項を入れずに和解するかしないかは天と地ほどの差があります。何よりも今後続くADR案件に及ぼす影響は計り知れません。ADRの存在意義にも関わる問題です。

 結果的にこのことを社会に伝えきれなかったのはやはり弁護団の責任でしょうか。マスコミを通じて社会に伝えられなかったことはイコール当事者である被災者にもADRの意義や問題点を理解してもらえなかったことだと思っています。
それがくやしくもあり、情けなくもあり、です。

 

伝えることは本当に難しい、でもこうやってつぶやきながらも訴え続けるほかありません。ひとりでも多くの人に理解して頂けることを願って。

(亀井)

突然ウサギ飼い

所員が受任したある国選弁護事件。一人暮らしの被疑者はうさぎを飼っていました。このままではうさぎは餓死してしまいます。ペットの問題に取り組む弁護士としては放置できません。被疑者のたっての希望もあり、うさぎを保護しました。

うさぎの名前はぴょん太くん(仮名)。トイレのしつけもしっかりしていて人なつこく、大事に育てられていたことがわかります。

被疑者は起訴され、これから裁判が始まります。ぴょん太くんとの生活はしばらく続きそうです。

(櫻井)

海事補佐人に登録しました

 海事補佐人とは、海難審判の際に受審人(審判を受ける人)を補佐して弁護活動を行う者で、一定の資格を有する者が海難審判所に申請することによって登録されます。その一定の資格とは、弁護士を除けばいわゆる一級の「船乗り」です。海のことは何と言っても船乗りが一番よくわかっていますからね。

 ただ、海難審判の手続きは裁判の手続きによく似ていますから(むしろ裁判の一種と言ってよいでしょう)、法の解釈適用や主張立証の組み立てなどに関しては弁護士の方が長けています。

 先般、船乗りとしては輝かしい経歴を持つある海事補佐人の方がある海難事故について書かれたエッセイを拝見して、海の男の気持ちはわかるけれど、法的にはどうかなという印象を持ったことがありました。

 私は小型船舶の操縦免許しか持っていませんが、小型船舶でも少なからぬ事故が起こっていることから、自分でも役に立てることがあるのではないかと思って登録した次第です。船乗りの主張をきちんと代弁できる機会があればうれしいですね。

(櫻井)

2012年1月25日 (水)

「正直私は,除染の方が・・・。」

 

先日,都内の東日本大震災の避難者交流会に参加させていただきました。
 この交流会には,弁護士だけでなく,司法書士の先生方や,放射能の除染に取り組む日本技術士会の先生方が参加されました。
 弁護士からは損害賠償請求とADRについての説明,技術士会の先生からは除染活動についての説明がなされました。

 冒頭のタイトルは,交流会の中盤,福島のお菓子を囲んで,避難者の方々と一緒にお茶を飲んでいた時に,
 隣に座っていらした避難者の男性が,私に言ってくれた言葉です。
こういうお話でした。

 私には,障がいを抱える家族がいます。
 家族と故郷で生活するためには,介護が必要です。
 介護ができるのは,若い介護士の方々です。
 でも,若い介護士の方々は,お家に帰れば若いお父さん,若いお母さんです。
家には,小さな息子や娘が待っています。
 自分は大丈夫でも,息子や娘のことを思うと,故郷に帰れないんです。
 だから,故郷には若い介護士の先生がいません。
 私も,介護のない故郷には,帰れません。
 損害賠償請求。大事だとは思うんですけど。正直私は,除染の方が・・・。

 ちょっとショックでした。
 弁護士になって,よし被災者の方の助けになるぞと意気込んでいた矢先に,除染の方がと言われてしまいました。
 弁護士に除染はできません。

 しばらく悶々としていたのですが,
 後日,原発被害の弁護団会議に参加した際,ふと思いました。

 たしかに,弁護士に,除染はできません。
 でも,国や地方公共団体による除染活動が進み,故郷にいつもの顔が戻り,
 当たり前の生活がもう一度始まるまでには,どうしてもお金がかかります。
 お金をもらっても悲しみは癒えないし,失ったものを計算するのは少し面倒くさいけれど,
 当たり前の生活を取り戻す,その準備のために,
 過去に目を向け,正当な権利の主張として,損害賠償請求をすることが必要になると思うのです。

 あの男性が一日でも早く故郷に帰れるように,
 故郷に帰るまでの日々を少しでもおだやかに暮らせるように,
 微力ですが,力になれたら幸せだと思いました。

(鏑木)

2012年1月10日 (火)

2012年もよろしくお願いします。

 新年になって早くも10日が過ぎようとしています。

 今年は「明けましておめでとうございます」という言葉を用いない年賀状を何枚か頂きました。東日本大震災で亡くなったたくさんの方への追悼とまだ何も明けていないという心情をそこに汲むことができます。

 昨年はわたしも弁護士会の活動、原発被災者賠償弁護団の活動などを通じて災害復興に力を注いだ年でした。都内の避難所、避難住宅、郡山、いわき、南相馬など各地で震災や原発関係の説明会・相談会を行いました。

 今思えば1年前はまさかこういう年になるなどと思っていませんでしたから1年後もどういう風に2012年を振り返っているのか予想できません。

 ただ間違いなく言えるだろうと思うのは弁護士として、ひとりの人間として、引き続き原発賠償問題を中心に災害復興のために活動していくだろうということです。

 都内には8000人以上の方が今もなお避難しています。その大半は福島原発から逃れてきた方です。中には原発から僅か数キロのところに自宅があり、もはや一生戻れないことを覚悟している方もいます。いつか帰れるだろうと願い続けている方もいます。

 どちらも辛いことに違いはありません。何もまだ終わっていないのです。

 テレビや新聞を見ていても、そしてこの弁護士業界を見渡しても、震災直後にあったような復興支援の熱が冷めつつあるのではないか、と感じることがあります。関心をもつ人、活動に携わる人が限られつつあるからです。

 ここ何年か刑事事件で再審の動きが活発になっていますが、どの事件もこれまでの道のりはとても長く、極めて地味な活動の元にあったはずです。その努力の偉大さに改めて尊敬したくなります。

 震災復興も原発被害救済も長く続く地味な山登りの始めにすぎません。息切れするには早すぎます。

 多くの方の力と支えがまだまだ必要です。一緒にがんばりましょう。

 昨年は忙しさにかまけてほとんど桜丘法律事務所のホームページで活動報告ができませんでした。今年は原発賠償関係の情報提供も兼ねてなるべく更新を重ねていきたいと思っています。当面のわたしの抱負です。

 2012年もよろしくお願いします。

(亀井)

2012年1月 3日 (火)

早朝法律相談を実施します

 

明けましておめでとうございます。昨年は東日本大震災の対応等で多忙な一年でしたが、おかげさまで所員一同それぞれの役割を果たすことができました。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 さて、桜丘法律事務所は今年も利用しやすい事務所を目指したいと考えております。今年はその第一弾として、早朝法律相談を実施することにしました。

 1月11日から毎週水曜、午前8時から8時30分までと、8時30分から9時までの30分枠でご相談を受け付けます。相談料は初回30分5,250円です。仕事の都合などでなかなか相談に来られない方にご利用いただければ幸いです。

 相談を希望される方は前日午後8時までにお電話でご予約下さい。

(櫻井)

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