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2011年9月

2011年9月28日 (水)

「補償」と「賠償」

 弁護士会の会派の勉強会に参加して、今日初めて、東京電力が被害者に送付した案内冊子(コピー)を手にしました。かねてより分量が多すぎて分りづらいという評判は聞いていましたが、それ以外に驚いたことがありました。

 第一は、謝罪の文言が全く書いてなかったことです。ひどい被害を与えているのだから、謝罪の一言くらいあっても良さそうなものだ、と思いました。とはいえ、私が見たのは案内冊子のみですから、謝罪文言は別に同封されていたのかも知れません。それならば、それは良しとしましょう。

 第二に驚いたのは、「賠償」でなく「補償」と書いてあったことです。法律を読みかじった方であれば、損害を与えた者に故意過失などの違法性がない場合が「補償」、違法性がある場合が「賠償」だということに気付くはずです。原発の事故は明らかに東電の過失によるものですから、損害の「賠償」がなされなければならないはずなのに、「補償」と書かれていました。これは、謝罪文言が全くなかったことと符合します。

 

東電、「しゃーなかった」という姿勢に終始するつもりか!?と思いました。

 後で気になって簡易なネット辞書で「補償」を調べてみたら、「損失を補って、つぐなうこと。特に、損害賠償として、財産や健康上の損失を金銭でつぐなうこと。」(デジタル大辞泉)と、「賠償」とごっちゃな説明がなされていました。両者の壁は崩れかけているのか。東電が「補償」と書いたのも悪気がなかったのか。

 でもやっぱり私は、意識して「補償」にしたのだと思いますがね。

(櫻井)

2011年9月20日 (火)

辞めさせてもらえない代表取締役  

 先般、会社の代表取締役の辞任を申出たのに辞めさせてもらえないという相談を受けました。会社といっても業務に携わっているのは唯一の株主であるオーナーと当該代表取締役のみです。オーナーに電話したら、当該代表取締役が会社に対して債務を負っており、それを清算しない限り辞任は認めないのだとのことでした。

 会社に対するツケを支払わない限り辞めさせてやらないって・・・代取は罰ゲームですか?
 そんなわけで会社とわからんちんのオーナーを相手に訴訟を起こしました。結論はすぐにでると思いますが、本当に迷惑な話です。でも、会社が後任を選んでくれないから辞められないなんていう話は実はよく聞きます。名前だけとか言われて安易に取締役や代表取締役にならないように気をつけて下さい。

(櫻井)

2011年9月13日 (火)

びっくり搾取!「熟女パブ」

 本日の相談はちょっと驚きました。相談者は30代前半のシングルマザー。無料の託児ルームがあるとの募集広告に釣られて近郊の「熟女パブ」に務めました。勤務は夜から早朝までです。20日くらい働いたところで嫌がらせのような退職勧奨を受け、退職しました。

 給与の支払を受けていなかった相談者は時給を計算して20万円弱の請求をしましたが、会社が弁護士を通じて寄越した回答は、会社の計算によると給与は4万数千円、逆に託児費用が15万円かかっているからそれを払えというものでした。そして困惑している相談者の許に届いたのが託児費用の支払を求める少額手続訴訟の訴状でした。

 これまで水商売の給料踏み倒しや罰金名目の賃金カットはいろいろ見てきましたが、賃金を一銭も(比喩です。歩合として日々300円から500円は支払われていました)支払わずに、無料と謳っていた託児費用を裁判で請求してくる厚かましい経営者は初めてです。

 応訴して、通常訴訟移行申出をし、賃金請求の反訴を提起する方針で法テラスに援助申請をしました。

 あんまり驚いたので紹介させて頂くことにしましたが、こんなの他にいくらでもあるのだろうか。

(櫻井)

2011年9月 6日 (火)

法律相談

  法律相談。弁護士なら誰でも当然出来るでしょうと思われがちですが、案外そうでもありません。決まった方針に基づいて訴訟を提起する、あるいは提起された訴訟に応訴するのであれば選択肢の幅も相当程度絞られますが、そもそもこちらにどのような権利があるのか、その権利を実現するための方法としてはどのような物があり、それぞれを選択した場合の利害得失はどうか。それをどのタイミングで行うのがよいかなど、判断すべき事項も多く、その選択も様々だからです。ですから弁護士会によっては新人には弁護士会が行う法律相談を担当させないところもあります。
 
 数年前にこんな相談を受けたことがあります。
 相談者Aさんは、パートの職場の知人に懇願されて数度に分けて300万円ほどのお金を貸したが返してくれない。子どもの学費という借金の理由も嘘だった。そこで訴訟を起こした。その結果合計200万円を毎月2万円ずつ支払う旨の和解が成立した。ところがこの知人は毎月送金してこないで、2か月に1度まとめて4万円を送ってくる。毎月2万円支払わなければならないと和解調書に書いてあるのに、しかもそれはこちらが譲歩した結果なのに、横着をして2か月ごとに送ってくる態度が小憎らしい。何とかならないか。

 和解調書には「2か月分以上遅滞したときは期限の利益を失う」と書いてありますが、知人の支払方法は、2か月分の遅滞にはなりません。従って和解調書上はペナルティの対象にならないのです。

 法的に何らかの手立てが取れる事案ではありませんでしたが、私は次のように回答しました。
Aさん、お怒りはごもっともだけど、これは案外面白いですよ。和解条項のペナルティが2か月分以上の遅滞にならないと課せられないのは、何かの拍子で支払日を過ぎてしまうことがあり得るということを考慮して余裕を持たせているからです。ところが2か月に1度の振込みはこの余裕を自ら捨てているようなものです。本人は振込手数料を節約してうまくやっているつもりかも知れませんが、1度でもしくじったら期限の利益を喪失して一括弁済をしなければならなくなります。1度もしくじらないで50回送金を続けられるか見てやろうじゃありませんか。でもって、1回でもしくじったら、残金耳をそろえて返せと言ってやればよいのです。
 
法的な対応を考えるというのではなく、ちょっと視点を変えてもらっただけなのですが、Aさんはこの考え方を気に入ってくれたようでした。
弁護士からすると、こんなところも法律相談の面白さだと思います。

(櫻井)

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