サービス業の自覚
第二東京弁護士会の副会長をしていた頃、会員弁護士に対する苦情の対応をしていました。当時、苦情件数は年間1000件超で、10年前と比較して10倍に増えていました。業務改善に資するために苦情を積極的に拾う努力をした面もありますが、それにしても10倍とは多すぎます。そこで原因を分析しました。
事件処理そのものや事件の結果に対する苦情はさほど増えていませんでした。これに対して多く寄せられていたのが、不親切、横柄、報告・連絡がないなどというものでした。何故でしょう。最近の弁護士は質が落ちたということでしょうか。
私は、利用者の権利意識の変化が苦情の要因だと考えました。テレビなどの影響もあり、弁護士は、良くも悪くも10年前に比べて身近になりました。そうすると、対価に見合ったサービスを求めるようになるのは当然です。ところが弁護士の意識は10年前とさほど変わっていない。「ちゃんとやってやるから細かいことに素人が口出ししなさんな。」というような雰囲気で仕事をしてしまう。だから、不親切、横柄、報告・連絡がない、という不満、苦情になってしまう。
今ではさすがに少なくなりましたが、以前は駅の構内タクシーでワンメーターの場所(例えば千葉地裁など)を指示すると露骨に嫌な顔をされたりして不愉快になることがしばしばでした。
弁護士の費用はそのワンメーターが10万円くらいです。外で使えば下にも置かぬ扱いを受けられる10万円が、弁護士の前では「つまらない事件でお手を煩わせて申し訳ありません。」みたいな雰囲気になる。この不快感はきっと私のタクシーの比ではないでしょう。
弁護士の、サービス業者としての自覚は、その辺から始めなければだめだと、自戒を込めて、思います。
(櫻井)
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