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2011年8月

2011年8月29日 (月)

サービス業の自覚


第二東京弁護士会の副会長をしていた頃、会員弁護士に対する苦情の対応をしていました。当時、苦情件数は年間1000件超で、10年前と比較して10倍に増えていました。業務改善に資するために苦情を積極的に拾う努力をした面もありますが、それにしても10倍とは多すぎます。そこで原因を分析しました。 

事件処理そのものや事件の結果に対する苦情はさほど増えていませんでした。これに対して多く寄せられていたのが、不親切、横柄、報告・連絡がないなどというものでした。何故でしょう。最近の弁護士は質が落ちたということでしょうか。

私は、利用者の権利意識の変化が苦情の要因だと考えました。テレビなどの影響もあり、弁護士は、良くも悪くも10年前に比べて身近になりました。そうすると、対価に見合ったサービスを求めるようになるのは当然です。ところが弁護士の意識は10年前とさほど変わっていない。「ちゃんとやってやるから細かいことに素人が口出ししなさんな。」というような雰囲気で仕事をしてしまう。だから、不親切、横柄、報告・連絡がない、という不満、苦情になってしまう。
 
今ではさすがに少なくなりましたが、以前は駅の構内タクシーでワンメーターの場所(例えば千葉地裁など)を指示すると露骨に嫌な顔をされたりして不愉快になることがしばしばでした。

弁護士の費用はそのワンメーターが10万円くらいです。外で使えば下にも置かぬ扱いを受けられる10万円が、弁護士の前では「つまらない事件でお手を煩わせて申し訳ありません。」みたいな雰囲気になる。この不快感はきっと私のタクシーの比ではないでしょう。
 
弁護士の、サービス業者としての自覚は、その辺から始めなければだめだと、自戒を込めて、思います。

(櫻井)

2011年8月22日 (月)

弁護士が足りているということ

 過日、ある地方(Q県としておきます)の法テラス法律事務所で働いているスタッフ弁護士と会議で顔を合わせました。会議が済んだ後、その弁護士から、「あの事件は無事に解決できそうです。」と報告を受けました。それは、私が彼にお願いした事件でした。

 半年前事務所に寄せられたWeb相談に離婚の相談がありました。相談の内容は、結婚して夫の郷里のP県で生活していたが、暴力が酷いので実家のQ県に逃げてきた。離婚したいのでQ県の弁護士に相談したら、離婚はできないと言われた。どうしたら良いかわからない、というものでした。話を聞く限り離婚できない理由は見あたりません。

「たまたま無能な弁護士に当たったんじゃないの?他の弁護士に相談してみたらどうだろう。法テラスに行ってみた?」

「いえ、たまたまではありません。3人の弁護士さんから離婚できないと言われました。法テラスで相談した先生も同じでした。」

 私が受任してあげたいところでしたが、法律扶助を利用するとなると東京の私が遠方のP県やQ県に行く旅費は出ません。彼女に旅費を負担する能力がないことはもちろんです。そこで思い切ってQ県の法テラス法律事務所のスタッフ弁護士に相談してみたのでした。ちなみに、当然のことですが、彼女に「離婚できない」という回答をした弁護士はスタッフ弁護士ではなく、扶助事件をも扱っている一般の弁護士です。

 若いスタッフ弁護士の彼は、多忙なはずなのに、簡単な説明をしただけで「離婚できないというのはおかしい。私が担当します。」と言って受任してくれたのでした。

 そして半年の間に事件をほぼ解決するところまで持ってきてくれました。

 Q県の弁護士が3人も揃って離婚できないと言ったのが何故なのかは推測するしかありません。おそらく手間がかかって金銭的にも魅力のない事件だと思い、受任したくなかったのでしょう。それはほめられたことではありませんが、人情としては分ります。しかし許せないのは、それを、「離婚できない」などと嘘を言って事件のせい、依頼者のせいにしたことです。相談者は「離婚できない」事案だと言われてあきらめかけていました。せめて、「面倒だから」「金にならないから」やらないのだと正直に言うべきでしょう。

 弁護士は数だけ揃っていても、使えなければ意味がありません。私が、まだ弁護士は足りていないと主張するゆえんです。

(櫻井)

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