2019年12月 9日 (月)

配偶者居住権について

 近時民法など相続に関する法律が大きく改正され相続に関するルールが変わっています。この記事では2020年4月1日より施行される配偶者居住権について簡単に説明します。

1 配偶者居住権について

 配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、原則として終身その建物に住み続けることができるという権利です。

 改正前に、配偶者が被相続人所有の建物に住み続けるためにはその建物の権利を得るというのが通常でしたが、その場合相続財産の分割で支障がでることがありました。

 例えば、相続人が妻及び子1人のみで、被相続人の遺産が自宅(評価額4000万円)及び預貯金が500万円だった場合、妻と子の相続分は1対1(妻2250万円、子2250万円)ということになります。妻が自宅に住み続ける場合自宅の権利を引き継ぐことになるのが通常ですが、預貯金が500万円しかありませんので、子が自分の相続分が足りないと不満に思い相続財産分割の審判を申立てる可能性があります。そして審判において自宅の売却が決まってしまい、結果妻が住まいを失うということにもなりえます。

 配偶者居住権が新設されたことにより、配偶者居住権は妻、同権利の負担付き自宅の所有権を子が取得するということができるようになりました。配偶者居住権の価値が2000万円だとすると、負担付き所有権の価値は2000万円となり、預貯金を250万円ずつ取得すれば法定相続分通りの相続でも妻が住まいを失うことにはなりません。

2 配偶者居住権の定め方

 配偶者居住権については、被相続人が遺言で妻に権利を遺贈するという形等で、被相続人が内容を定めることができます。

 被相続人が遺言で配偶者居住権について決めていなかったとしても、相続人間で協議して配偶者居住権について定めることができます。また相続人間で協議してまとまらなかった場合でも、遺産分割の審判を行う家庭裁判所が、妻の希望や妻の生活を維持するための必要性の高さなどを考慮して定めることができます。

3 配偶者居住権の注意点

 配偶者居住権で一点注意すべき所は、この権利について登記をしておかないと、建物の所有権を得た第三者にその権利を主張できなくなるという点です。例えば先の例で妻と子が協議を行い、自宅の配偶者居住権を妻が得た後で、子がその自宅を第三者に売却してしまったとします。この場合妻が配偶者居住権についてあらかじめ登記をしておかなかった場合、自宅の所有権を手に入れた第三者に権利を主張できず、自宅に住み続けることができないということになってしまいます。登記をしておかなければいけないという点は特に注意しておく必要があります。

 配偶者居住権は全く新しい制度ですので、遺言作成や相続財産分割の際どのように定めるか分からないということもあると思います。ご不明な点があればお近くの法律事務所に相談されることをおすすめいたします。

桜丘法律事務所 弁護士 大窪 和久

2019年12月 2日 (月)

遺言に関する見直しについて

 近時民法など相続に関する法律が大きく改正され相続に関するルールが変わっています。この記事では遺言に関して変わったところについて簡単にまとめていきます。

1 自筆証書遺言(自分自身で書く遺言)の作成方法

 自筆証書遺言は法律上で作り方が定められており、それに従わない遺言は効力が認められません。

 従前は、自筆証書遺言については、財産目録を含めた全文を自書した上、日付と氏名を明記し押印したものでなければなりませんでした。法律改正後は遺言本文に添付する財産目録については、自筆ではなくても良いことになり、パソコン等で作成した目録を遺言に添付することができるようになりました。また、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳のコピーなどを添付して目録として使用することも可能になりました。

 なお、偽造防止の為、自書によらない財産目録については、各ページに署名押印をしなければいけないことになっています。

2 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

 2020年7月より自筆証書遺言を作成した人は法務局に遺言書の保管を申請することができるようになります。これまで自筆証書遺言は自宅に保管したり貸金庫に預けたりするような形で自分に保管するのが通常でしたが、それを公的機関である法務局で預かってくれるようになります。

 被相続人本人が亡くなった後、遺言書が保管されているかどうかについて相続人が法務局に問い合わせて調べることもできます。遺言書が保管されている場合には遺言書の閲覧をしたり、写しを交付してもらうこともできます。

3 遺言執行者人の権限の明確化

 遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要なことを行う人を指し、遺言の中で被相続人本人が指定することができます。

 旧法では抽象的な規定のみでしか遺言執行者の権限については定められておらず、裁判例により具体化されていました。今回の法改正により遺言執行者の法的地位及び権限が法律上明確にされました。

 また、遺言執行人は財産目録を作成した上で遺言の内容を相続人に知らせることが義務とされました。このことにより、相続人は自分の相続内容について把握しやすくなりました。

 遺言制度に関する見直しが行われたことにより、以前より遺言による相続がやりやすくなりました。遺言の作成等ご不明な点があればお近くの法律事務所に相談されることをおすすめいたします。

桜丘法律事務所 弁護士 大窪 和久

2019年11月 1日 (金)

73期弁護士採用の採用について(募集締切)

桜丘法律事務所は73期弁護士を以下の要領で募集します(募集は締め切りました)。

 

募集人数 73期 1人

 

条件

・入所後1年~2年のトレーニングの後,事務所の指定に従い法テラスのスタッフ弁護士又はひまわり基金公設事務所の弁護士として地方に赴任できる人。法テラス・ひまわりの別及び任地についての希望はお聞きしませんので,ご注意下さい。

・権威にこびない人。

 

選考方法

1.書面審査

2019年11月1日から2019年12月1日(当日消印有効)までの間に,履歴書,志望理由書及び司法試験の成績票(写し可)をお送りください。(定型のエントリーシートはありません。)

なお,応募書類は原則としてお返ししませんが,返還を希望される場合には応じますので,返信用封筒を併せてお送りください。

また,書面審査の結果,面接をお断りすることがあります。

2.面接

2019年12月7日(土)に実施します。同日他の事務所の面接の予定が入っている人に対してはなるべく面接時間の配慮をいたします。

3.結果通知

面接後,メールにて結果を通知しますので,履歴書にメールアドレスをご記載ください。

 

 なお,当事務所への応募にあたっては,事務所の雰囲気を事前に知っていただいたうえで応募していただくという意味でも,神山ゼミや事務所説明会(開催済み)に参加したことがあるのが望ましいですが,必須の条件ではありません。
 神山ゼミについては,本ブログに開催告知をアップしておりますので,ご参照ください。

2019年10月25日 (金)

11月,12月の神山ゼミのお知らせ

神山ゼミを以下の要領で行います。

 

【11月】

日時:11月13日(水)午後6時から午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校203教室

 

【12月】

日時:12月13日(金)午後6時午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校203教室

https://www.itojuku.co.jp/itojuku/school/tokyo/index.html

※ ゼミ後に懇親会を行います。ゼミ参加希望の方は,懇親会の出席の有無もお知らせください。

 

【備考】

法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。

方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。

なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨お伝えください。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を松岡孝(matsuoka@sakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

 

[件名]11月の神山ゼミ(12月の神山ゼミ)

[内容]

・氏名:

・メールアドレス:

・持込相談の事件がある場合にはその旨

・懇親会の出席の有無

皆様のご参加をお待ちしています。

2019年10月11日 (金)

桜丘法律事務所の事務所説明会が冷やかしも歓迎する理由

 私が桜丘法律事務所を設立したのは19981月のことです。新人弁護士を育てて司法過疎地に派遣するために設立しました。冤罪を防ぐためには被疑者段階の弁護が不可欠であり,そのためには被疑者国選の実現が必須でした。しかし地裁支部管内に弁護士が1人もいないような地域があっては被疑者国選制度の実現もかないません。また,当時そうした地域ではクレジット・サラ金の高利に苦しむ人たちが放置され,事件屋が跳梁跋扈していました。

 過疎は過密の対概念ですから,過疎問題は過密都市の弁護士が解決すべき課題です。過疎地域に弁護士を配置するのは地方の弁護士会の責務ではなく,東京の弁護士の責務だと考えました。

 弁護士が居ない地域に送る弁護士は,しっかりした力のある弁護士でなければなりません。また,経済面や事件の処理など困難に直面した時には頼れる保証が必要です。そのために,育てて送る事務所,帰って来られる事務所を作りました。

 一番の問題意識に被疑者弁護の充実と冤罪防止がありましたので,旧知の間柄であった神山啓史弁護士にお願いして,刑事事件の指導役を引き受けてもらいました。当時「冬の時代」と言われた刑事裁判でしたが,その背景には弁護人の力量不足という問題がありました。判事,検事は組織で教育を受けますが,弁護士にはそのような機会はありませんでした。そこで,毎月の所内勉強会「神山ゼミ」を当初から修習生,若手弁護士に公開しました。

 そんな風に作った事務所ですので,まず,司法過疎について知ってほしい,できれば過疎解消のために力を貸してほしい,そして刑事弁護について学び,きちんと刑事弁護ができる弁護士が1人でも多く育ってほしいという願いを伝えるために,事務所説明会を開くことにしました。

 ですから,事務所のことを知ってほしい以上に,司法過疎や刑事弁護について興味を持ってほしい,というのが,桜丘法律事務所が事務所説明会を開く理由なのです。

 桜丘法律事務所が「冷やかし歓迎」というのはそういう理由からです。

 私(櫻井)の話はともかく,刑事弁護のスピリッツに触れたい方は,ぜひ説明会においで下さい。神山弁護士のミニ講義が体験できますよ。

 10月24日と10月30日,いずれも18時から,事務所隣の伊藤塾本館203号室で開催します。

2019年9月26日 (木)

73期修習予定者向け事務所説明会のお知らせ

司法試験合格者の皆さん,おめでとうございます。

桜丘法律事務所では,下記要領にて73期修習予定者に対する事務所説明会を行います。

当事務所は,日弁連のひまわり基金公設事務所又は法テラスのスタッフ弁護士として地方で勤務する新人弁護士の養成を続けています。弁護士過疎解消をはじめ,公益的な弁護士業務に幅広く関心のある方のご参加をお待ちしています。

とりわけ当事務所に入所を希望されている方にはぜひおいで頂いて事務所の雰囲気を知って頂きたいと考えています。なお,当事務所の73期の採用予定は1名です。

当日は,東電OL殺人事件主任弁護人であり,刑事専門弁護士である神山啓史弁護士による刑事弁護講演も予定されています。刑事事件に興味のある方も是非ご参加下さい。

準備の都合上,各回先着30名とさせて頂きますのでご了承下さい。

 

【日時・場所】

第1回 令和元年10月24日(木)18:00~20:00頃まで

    @伊藤塾本館の203教室(東京都渋谷区桜丘町17-5)

第2回 令和元年10月30日(水)18:00~20:00頃まで

    @伊藤塾本館の203教室(東京都渋谷区桜丘町17-5)


【説明会内容】

第1部 約60分

桜丘法律事務所の紹介   櫻井光政所長

第2部 約60分

刑事弁護講演         神山啓史弁護士

終了後,事務所見学と懇親会を予定しています(参加自由)。


【申し込み方法】
参加希望者は,件名を「事務所説明会参加希望」として,

①名前

②メールアドレス

③参加希望日

④懇親会参加希望の有無

を明記の上,松岡(matsuokasakuragaoka.gr.jp)宛にメールにてお申込み下さい。

※スパム防止のため@を大文字にしています。小文字に変換して送信して下さい。
なお,配布物の準備の都合上,説明会参加のご連絡は開催の3日までに頂けるようお願い申し上げます。

 

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-6    

渋谷協栄ビル7階 桜丘法律事務所

電話 03-3780-0991

http://www.sakuragaoka.gr.jp

2019年9月 6日 (金)

9月,10月の神山ゼミのお知らせ

神山ゼミを以下の要領で行います。

 

【9月】

日時:9月26日(木)午後6時から午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校203教室

【10月】

日時:10月16日(水)午後6時午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校202教室

https://www.itojuku.co.jp/itojuku/school/tokyo/index.html

※ ゼミ後に懇親会を行います。ゼミ参加希望の方は,懇親会の出席の有無もお知らせください。

 

【備考】

法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。

方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。

なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨お伝えください。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を松岡孝(matsuoka@sakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

 

[件名]9月の神山ゼミ(10月の神山ゼミ)

[内容]

・氏名:

・メールアドレス:

・持込相談の事件がある場合にはその旨

・懇親会の出席の有無

皆様のご参加をお待ちしています。

2019年8月13日 (火)

死刑執行に抗議する

8月2日,2名の死刑囚に対する死刑が執行されました。私(櫻井)は,死刑は非人道的な刑罰であり,速やかに廃止されるべきだと考えています。欧州諸国では既に廃止されている死刑を維持する必要性は全くありません。存置の根拠に,よく遺族感情が持ち出されますが,先般判決があった,公道レースのような走行で赤信号を無視し,青信号に従って交差点に入ってきた自動車に乗っていた4人を死なせたような危険運転の事故でも法定刑の上限は有期刑です。この場合は遺族の処罰感情がいくら強くても死刑ということにはなりません。法の目的が遺族感情の満足だけでないことの表れです。そうであれば,死刑の根拠を遺族感情に求める,もっと言えば,遺族感情のせいにするのは間違いだと思います。政府は,日本人としての誇りを持てるようにしたいと考えるなら,真っ先に死刑を廃止すべきだと考えます。

以下は死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90の抗議声明を,許可を得て転載します。(櫻井)

 

抗 議 声 明

 本日(8月2日)の庄子幸一さん(64歳・東京拘置所)、鈴木泰徳さん(50歳・福岡拘置所)に対する死刑執行に対し、強く抗議する。

今年日本ではラグビーワールドカップが開催され、世界からの注目度は増している。そんな中での死刑執行は、世界の人々から日本の人権状況を指弾されるだろう。

日本政府は、すでに世界の70%の国と地域が死刑を廃止していることに目を向け、また死刑に誤判が不可避であることを理解し、さらに先の世論調査では、終身刑を導入すれば死刑を廃止してもよいという意見が40%近くに及んでいることを踏まえ、死刑執行を停止して、死刑廃止に向けた議論を開始すべきである。

昨年のオウム事件13名の大量執行の異常さは、EUを始め多くの国から批判された。13名の中には再審請求中の人も多く、そして昨年末の2名の執行も再審請求中の人だった。

今回の執行で、安倍晋三内閣は、第一次で10名、第二、三、四次で38名、合計48名という過去最多の死刑を執行した内閣となった。私たちはこの安倍内閣の残酷さに怒りを禁じえない。

今回の死刑執行がどのような過程を経て決定されているのか、まったく明らかにされていない。どのような基準で、誰がどのように執行される死刑囚を決定しているのか。国家が人の命を奪うという究極的な権力を発動する時に、その過程がまったく明らかにされないのは民主国家としてはあり得ないことだ。しかし、現実にはある日突然「本日死刑確定者何名に対して死刑を執行しました」と、確定判決で認定された「罪状」とともに発表するだけ。再審請求中の人をも執行するという暴挙は、憲法32条の「何人も、裁判所において裁判を受ける権利がある」に対する違反となるにもかかわらず、その執行をする根拠を示すことさえしない。

私たちは、広く社会に向けて、あらためて、このような殺戮の繰り返しや、命を奪うことによっては、なに一つ問題は解決しないこと、そして終身刑等の導入など、死刑を執行しなくてもよい施策を真剣に検討することを呼びかける。

今回処刑された庄子幸一さんは再審請求中だった。庄子幸一さんは、2件の女性殺人事件で死刑判決を受け、2007年11月に死刑が確定した。近年は、被害者への謝罪・償いとして多くの短歌・俳句を詠み、死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金に多数の作品を応募し、その作品は高く評価されている。 

また、国会議員が実施した死刑囚アンケートに答えて、「許して下さい。許して下さい。許して下さい。赦しのない時間の中で、貴女方に語りかけることを私に許して下さい。いつの日かこの獄中に終わる命ですが。(中略)我が悔の想いが届く日まで。魂があると信じて生きている限り私を責め来る声に耳を澄ます。そう命のある限り!」アンケートの最後には次のような歌を記している。

「歪みなき悔ゆる叫びの声透る命を賭して血は流れけり」

鈴木泰徳さんは、2004年に福岡で起こった3女性強盗殺人事件の実行犯として2011年に死刑が確定した。裁判では、殺意はなかったことや心身耗弱状態であったことなどを主張していた。現在は、再審請求も恩赦出願もしていなかったと思われる。

 山下貴司法務大臣が就任して、2度目の死刑執行だが、参議院選挙が終わり昨日国会が始まったばかりだった。二人の事件記録を精査する余裕などあるわけがなく、慎重さを欠く拙速な執行だったと言わざるを得ない。

 私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また山下法務大臣に執行された庄司さん、鈴木さんに代わり、そして死刑執行という苦役を課せられた拘置所職員に代わって、山下法務大臣に対し、強く抗議する。

201982

 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90

 

2019年7月 1日 (月)

7月,8月の神山ゼミのお知らせ

神山ゼミを以下の要領で行います。

 

【7月】

日時:7月16日(火)午後6時から午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校202教室

【8月】

日時:8月21日(水)午後6時午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校202教室

https://www.itojuku.co.jp/itojuku/school/tokyo/index.html

【備考】

法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。

方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。

なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨お伝えください。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を松岡孝(matsuokasakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

 

[件名]7月の神山ゼミ(8月の神山ゼミ)

[内容]

・氏名:

・メールアドレス:

・持込相談の事件がある場合にはその旨

皆様のご参加をお待ちしています。

2019年5月14日 (火)

転載 今井亮一の裁判傍聴バカ一代「右直事故」

今井さんの許可を得て転載します。

 

☆★☆☆★☆☆☆★☆☆☆☆
 
今 井 亮 一 の
 裁 判 傍 聴 バ カ 一 代
(いちだい)
 <典型的な「右直事故」、
   失われなくていい若い命がまた>
 2019年5月11日(土) 第2253号
☆☆☆☆★☆☆☆★☆☆★☆

 前号のオービス裁判が終わって13時48分頃、同じフロアの202号法廷へ入ってみた。
 13時30分~14時30分、刑事第2部(伊藤吾朗裁判官)で「過失運転致死」の審理。 ※東京地裁は刑事第○部だが、さいたま地裁は第○刑事部なのだ。

 被告人は非身柄。中堅の女性弁護人と男性弁護人の間に座っていた。黒のパンツスーツで地味な小顔少女…。
 検察官の後ろに、喪服の年配男性が。被害者の父親だろう、静かな悲しみの底にいる、という感じだ。その隣の中年男性は被害者参加弁護士か。
 傍聴席に喪服の若い男女が2人ずついる。

画像
 ※画像は本件と関係ない。本件の自動二輪の損傷は画像の程度ではなかったはず。

 ちょうど検察官が論告を始めるところだった。

検察官 「最も基本的かつ重要な注意義務を怠り…右折進行する際、対抗直進車の…」

 被告人は普通乗用車を運転して交差点を約15キロの速度で右折、その左側面前部へ直進の自動二輪を衝突させ、25歳男性を外傷性脳損傷などで死亡させたのだという。
 典型的な右直(うちょく)事故だ。

 私は昔、オートバイ乗りだった。
 オートバイは前面の面積が小さいため、対向車からは速度が読みにくく、かつ実際より遠くに見える。そこから起こる右直事故が非常に多い。法的にどっちが悪くても良くても、死傷するのは体がむき出しのオートバイのほうだ。オートバイ乗りの基本は「ケガと弁当は自分持ち」。気をつけろ!
 そのようにあちこちで何度も何度も教わった。
 とくに右折車は信号の変わり目に右折することが多い。黄色信号のとき、普段はアクセルを巻いて(※)突っ切るのだけど、対向車線に右折待ちの車両がいるときは止まろうよ、ということが身についた。 ※オートバイのアクセルは右ハンドルグリップを手前に巻いて開けるようになっている。

検察官 「ドライブレコーダーの…衝突…被告人車両は大きく傾き…」

 なにぃ、普通乗用車を衝撃で大きく傾けるって、被害者の自二はどんだけスピードを出してたんだ?

検察官 「被告人…前科がない…保険により賠償…母親が公判廷で…を約束…そこで求刑です」

 求刑は禁錮10月だった。
 死亡事故で求刑が10月ってかなり低い。「うわ、バイクが高速だったんだね」と私は傍聴ノートに書いた。

 13時53分、被害者の意見陳述を被害者参加弁護士が行なった。
 かつれつよく、良い声ではつらつと、徹底的に被告人を悪く言った。被害者側の速度については一切触れず。なんと空虚な有能さか、申し訳ないけど私はそう思った。

弁護士 「被告人を厳罰に処さなければ同じことをくり返すでしょう」

 なんだと、この野郎! 私はムカついた。
 こんな小娘(被告人)を有罪にして満足するお前らが、右直事故が当たり前に起こる事故であることを結果として隠し、右直事故により進路をそれた車両が歩道で信号待ちをしている“柔らかな命”を奪う事態を、これからも招き続けるのだ!

 続いて弁護人が最終弁論。
 相弁護人の席にいた男性弁護人(もみあげからあごへ黒い髭)が、主任の女性弁護人のさらに裁判官席寄りに立ち、紙を見ることなく述べ始めた。裁判員裁判好きな弁護士なのだね、きっと。
 こんな部分があった。

弁護人 「甲12号証…(被害者の自二は)時速86キロから93キロのスピード…甲2号証…制限速度は40キロ…甲4号証…ドライブレコーダー…衝突の0.7秒後に赤信号になっている…3.3秒前に黄色に変わった」

 


 交通部門の警察官も検察官も持っているこの本によれば、時速90キロで車両は25m進行する。
 被害者の自二がずっと90キロの速度だったとすれば、交差点の82.5m手前で黄色になったのに止まらず、交差点に突っ込んだことになる。
 負傷ですまず死亡に到ったのは、ひとえに被害者自身の速度の出し過ぎじゃないのか。
 しかし、25歳の若い命が失われたのだし、いちおう直進優先のルールがあるので、右折車のほうを処罰しとこう、そういうことと思えた。

 若い頃の私は、オートバイでけっこうかっ飛ばした。「ケガと弁当は自分持ち」と教わっても、他人事と考えていたところがある。

今井  「うわっ、今の瞬間、大事故になって死んでてもおかしくない。助かったのは幸運としか言いようがない。おかげで今後はこのシチュエーションに注意するけれども、不運にも死んでしまう人もいるんだろうなぁ」

 そのようにひりひり思ったことが何度もある。本件の被害者は死んでしまった、そう言えるかも。
 判決期日を決めるに当たり、被害者参加弁護士が言った。

弁護士 「命日が5月26日…それ以降が良いと…」

 裁判官が5月31日を提案すると、検察官が言った。

検察官 「命日から少なくとも1週間以上いただきたいと…」

 判決は6月6日(木)11時30分からB棟301号法廷となった。
 おそらくは昨年の5月26日、25歳の若者が右直事故で亡くなったのだ。なんてこった、合掌。

──────★ 編集後記 ★───────

1、交通事故の多くは交差点及びその付近で起こる。人や車両が交差するのだから当たり前だ。
2、右折車は信号の変わり際に右折することが多い。
3、右折車は、対向直進自二が実際より遠くにいると感じ、かつその速度を見誤りがちだ。
4、直進自二と右折車との右直事故は、自二にとっては典型的な事故パターンである。
5、直進自二は信号の変わり際の交差点へ突っ込むな!
6、どっちが悪くても死傷で大損するのは自二の側だ!
7、速度が高いほど回避しにくく、かつ死傷の程度は大きくなる!

 右直事故はありふれており、自二の運転者が死亡したくらいではまず報道されない。
 報道されても、以上7つの流れにテレビ、新聞が言及することは絶対にない。たぶん、「死傷した側をムチ打つのか!」とクレームが殺到するから。そもそもそんな言及は記者クラブメディアの役割から外れるし。
 かくして、起こりやすい事故が起こり続け、失われなくていい命が失われ続ける、そういう構図が私には見える。

 あなたが自二や四輪を運転するなら、これまで以上に肝に銘じてください。
 自二や四輪を運転する方が周囲においでなら、うるさく教えてあげてください。

 4月末に332部、5月4日に328部だった発行部数は、なんと現在333部! ありがとうございます~!

────────────────────
☆メールマガジン「今井亮一の裁判傍聴バカ一代」
無断転載は固く禁じます。
☆発行責任者:今井亮一
☆ブログ:「今井亮一の交通違反バカ一代
☆twitter:http://twitter.com/#!/court534
☆問い合わせ:saiban-boutyou@love.so-net.jp
☆解除:http://www.mag2.com/kaijo.html

«5月,6月の神山ゼミのお知らせ

2019年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ