2019年10月11日 (金)

桜丘法律事務所の事務所説明会が冷やかしも歓迎する理由

 私が桜丘法律事務所を設立したのは19981月のことです。新人弁護士を育てて司法過疎地に派遣するために設立しました。冤罪を防ぐためには被疑者段階の弁護が不可欠であり,そのためには被疑者国選の実現が必須でした。しかし地裁支部管内に弁護士が1人もいないような地域があっては被疑者国選制度の実現もかないません。また,当時そうした地域ではクレジット・サラ金の高利に苦しむ人たちが放置され,事件屋が跳梁跋扈していました。

 過疎は過密の対概念ですから,過疎問題は過密都市の弁護士が解決すべき課題です。過疎地域に弁護士を配置するのは地方の弁護士会の責務ではなく,東京の弁護士の責務だと考えました。

 弁護士が居ない地域に送る弁護士は,しっかりした力のある弁護士でなければなりません。また,経済面や事件の処理など困難に直面した時には頼れる保証が必要です。そのために,育てて送る事務所,帰って来られる事務所を作りました。

 一番の問題意識に被疑者弁護の充実と冤罪防止がありましたので,旧知の間柄であった神山啓史弁護士にお願いして,刑事事件の指導役を引き受けてもらいました。当時「冬の時代」と言われた刑事裁判でしたが,その背景には弁護人の力量不足という問題がありました。判事,検事は組織で教育を受けますが,弁護士にはそのような機会はありませんでした。そこで,毎月の所内勉強会「神山ゼミ」を当初から修習生,若手弁護士に公開しました。

 そんな風に作った事務所ですので,まず,司法過疎について知ってほしい,できれば過疎解消のために力を貸してほしい,そして刑事弁護について学び,きちんと刑事弁護ができる弁護士が1人でも多く育ってほしいという願いを伝えるために,事務所説明会を開くことにしました。

 ですから,事務所のことを知ってほしい以上に,司法過疎や刑事弁護について興味を持ってほしい,というのが,桜丘法律事務所が事務所説明会を開く理由なのです。

 桜丘法律事務所が「冷やかし歓迎」というのはそういう理由からです。

 私(櫻井)の話はともかく,刑事弁護のスピリッツに触れたい方は,ぜひ説明会においで下さい。神山弁護士のミニ講義が体験できますよ。

 10月24日と10月30日,いずれも18時から,事務所隣の伊藤塾本館203号室で開催します。

2019年9月26日 (木)

73期修習予定者向け事務所説明会のお知らせ

司法試験合格者の皆さん,おめでとうございます。

桜丘法律事務所では,下記要領にて73期修習予定者に対する事務所説明会を行います。

当事務所は,日弁連のひまわり基金公設事務所又は法テラスのスタッフ弁護士として地方で勤務する新人弁護士の養成を続けています。弁護士過疎解消をはじめ,公益的な弁護士業務に幅広く関心のある方のご参加をお待ちしています。

とりわけ当事務所に入所を希望されている方にはぜひおいで頂いて事務所の雰囲気を知って頂きたいと考えています。なお,当事務所の73期の採用予定は1名です。

当日は,東電OL殺人事件主任弁護人であり,刑事専門弁護士である神山啓史弁護士による刑事弁護講演も予定されています。刑事事件に興味のある方も是非ご参加下さい。

準備の都合上,各回先着30名とさせて頂きますのでご了承下さい。

 

【日時・場所】

第1回 令和元年10月24日(木)18:00~20:00頃まで

    @伊藤塾本館の203教室(東京都渋谷区桜丘町17-5)

第2回 令和元年10月30日(水)18:00~20:00頃まで

    @伊藤塾本館の203教室(東京都渋谷区桜丘町17-5)


【説明会内容】

第1部 約60分

桜丘法律事務所の紹介   櫻井光政所長

第2部 約60分

刑事弁護講演         神山啓史弁護士

終了後,事務所見学と懇親会を予定しています(参加自由)。


【申し込み方法】
参加希望者は,件名を「事務所説明会参加希望」として,

①名前

②メールアドレス

③参加希望日

④懇親会参加希望の有無

を明記の上,松岡(matsuokasakuragaoka.gr.jp)宛にメールにてお申込み下さい。

※スパム防止のため@を大文字にしています。小文字に変換して送信して下さい。
なお,配布物の準備の都合上,説明会参加のご連絡は開催の3日までに頂けるようお願い申し上げます。

 

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-6    

渋谷協栄ビル7階 桜丘法律事務所

電話 03-3780-0991

http://www.sakuragaoka.gr.jp

2019年9月 6日 (金)

9月,10月の神山ゼミのお知らせ

神山ゼミを以下の要領で行います。

 

【9月】

日時:9月26日(木)午後6時から午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校203教室

【10月】

日時:10月16日(水)午後6時午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校202教室

https://www.itojuku.co.jp/itojuku/school/tokyo/index.html

※ ゼミ後に懇親会を行います。ゼミ参加希望の方は,懇親会の出席の有無もお知らせください。

 

【備考】

法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。

方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。

なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨お伝えください。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を松岡孝(matsuoka@sakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

 

[件名]9月の神山ゼミ(10月の神山ゼミ)

[内容]

・氏名:

・メールアドレス:

・持込相談の事件がある場合にはその旨

・懇親会の出席の有無

皆様のご参加をお待ちしています。

2019年8月13日 (火)

死刑執行に抗議する

8月2日,2名の死刑囚に対する死刑が執行されました。私(櫻井)は,死刑は非人道的な刑罰であり,速やかに廃止されるべきだと考えています。欧州諸国では既に廃止されている死刑を維持する必要性は全くありません。存置の根拠に,よく遺族感情が持ち出されますが,先般判決があった,公道レースのような走行で赤信号を無視し,青信号に従って交差点に入ってきた自動車に乗っていた4人を死なせたような危険運転の事故でも法定刑の上限は有期刑です。この場合は遺族の処罰感情がいくら強くても死刑ということにはなりません。法の目的が遺族感情の満足だけでないことの表れです。そうであれば,死刑の根拠を遺族感情に求める,もっと言えば,遺族感情のせいにするのは間違いだと思います。政府は,日本人としての誇りを持てるようにしたいと考えるなら,真っ先に死刑を廃止すべきだと考えます。

以下は死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90の抗議声明を,許可を得て転載します。(櫻井)

 

抗 議 声 明

 本日(8月2日)の庄子幸一さん(64歳・東京拘置所)、鈴木泰徳さん(50歳・福岡拘置所)に対する死刑執行に対し、強く抗議する。

今年日本ではラグビーワールドカップが開催され、世界からの注目度は増している。そんな中での死刑執行は、世界の人々から日本の人権状況を指弾されるだろう。

日本政府は、すでに世界の70%の国と地域が死刑を廃止していることに目を向け、また死刑に誤判が不可避であることを理解し、さらに先の世論調査では、終身刑を導入すれば死刑を廃止してもよいという意見が40%近くに及んでいることを踏まえ、死刑執行を停止して、死刑廃止に向けた議論を開始すべきである。

昨年のオウム事件13名の大量執行の異常さは、EUを始め多くの国から批判された。13名の中には再審請求中の人も多く、そして昨年末の2名の執行も再審請求中の人だった。

今回の執行で、安倍晋三内閣は、第一次で10名、第二、三、四次で38名、合計48名という過去最多の死刑を執行した内閣となった。私たちはこの安倍内閣の残酷さに怒りを禁じえない。

今回の死刑執行がどのような過程を経て決定されているのか、まったく明らかにされていない。どのような基準で、誰がどのように執行される死刑囚を決定しているのか。国家が人の命を奪うという究極的な権力を発動する時に、その過程がまったく明らかにされないのは民主国家としてはあり得ないことだ。しかし、現実にはある日突然「本日死刑確定者何名に対して死刑を執行しました」と、確定判決で認定された「罪状」とともに発表するだけ。再審請求中の人をも執行するという暴挙は、憲法32条の「何人も、裁判所において裁判を受ける権利がある」に対する違反となるにもかかわらず、その執行をする根拠を示すことさえしない。

私たちは、広く社会に向けて、あらためて、このような殺戮の繰り返しや、命を奪うことによっては、なに一つ問題は解決しないこと、そして終身刑等の導入など、死刑を執行しなくてもよい施策を真剣に検討することを呼びかける。

今回処刑された庄子幸一さんは再審請求中だった。庄子幸一さんは、2件の女性殺人事件で死刑判決を受け、2007年11月に死刑が確定した。近年は、被害者への謝罪・償いとして多くの短歌・俳句を詠み、死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金に多数の作品を応募し、その作品は高く評価されている。 

また、国会議員が実施した死刑囚アンケートに答えて、「許して下さい。許して下さい。許して下さい。赦しのない時間の中で、貴女方に語りかけることを私に許して下さい。いつの日かこの獄中に終わる命ですが。(中略)我が悔の想いが届く日まで。魂があると信じて生きている限り私を責め来る声に耳を澄ます。そう命のある限り!」アンケートの最後には次のような歌を記している。

「歪みなき悔ゆる叫びの声透る命を賭して血は流れけり」

鈴木泰徳さんは、2004年に福岡で起こった3女性強盗殺人事件の実行犯として2011年に死刑が確定した。裁判では、殺意はなかったことや心身耗弱状態であったことなどを主張していた。現在は、再審請求も恩赦出願もしていなかったと思われる。

 山下貴司法務大臣が就任して、2度目の死刑執行だが、参議院選挙が終わり昨日国会が始まったばかりだった。二人の事件記録を精査する余裕などあるわけがなく、慎重さを欠く拙速な執行だったと言わざるを得ない。

 私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また山下法務大臣に執行された庄司さん、鈴木さんに代わり、そして死刑執行という苦役を課せられた拘置所職員に代わって、山下法務大臣に対し、強く抗議する。

201982

 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90

 

2019年7月 1日 (月)

7月,8月の神山ゼミのお知らせ

神山ゼミを以下の要領で行います。

 

【7月】

日時:7月16日(火)午後6時から午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校202教室

【8月】

日時:8月21日(水)午後6時午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校202教室

https://www.itojuku.co.jp/itojuku/school/tokyo/index.html

【備考】

法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。

方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。

なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨お伝えください。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を松岡孝(matsuokasakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

 

[件名]7月の神山ゼミ(8月の神山ゼミ)

[内容]

・氏名:

・メールアドレス:

・持込相談の事件がある場合にはその旨

皆様のご参加をお待ちしています。

2019年5月14日 (火)

転載 今井亮一の裁判傍聴バカ一代「右直事故」

今井さんの許可を得て転載します。

 

☆★☆☆★☆☆☆★☆☆☆☆
 
今 井 亮 一 の
 裁 判 傍 聴 バ カ 一 代
(いちだい)
 <典型的な「右直事故」、
   失われなくていい若い命がまた>
 2019年5月11日(土) 第2253号
☆☆☆☆★☆☆☆★☆☆★☆

 前号のオービス裁判が終わって13時48分頃、同じフロアの202号法廷へ入ってみた。
 13時30分~14時30分、刑事第2部(伊藤吾朗裁判官)で「過失運転致死」の審理。 ※東京地裁は刑事第○部だが、さいたま地裁は第○刑事部なのだ。

 被告人は非身柄。中堅の女性弁護人と男性弁護人の間に座っていた。黒のパンツスーツで地味な小顔少女…。
 検察官の後ろに、喪服の年配男性が。被害者の父親だろう、静かな悲しみの底にいる、という感じだ。その隣の中年男性は被害者参加弁護士か。
 傍聴席に喪服の若い男女が2人ずついる。

画像
 ※画像は本件と関係ない。本件の自動二輪の損傷は画像の程度ではなかったはず。

 ちょうど検察官が論告を始めるところだった。

検察官 「最も基本的かつ重要な注意義務を怠り…右折進行する際、対抗直進車の…」

 被告人は普通乗用車を運転して交差点を約15キロの速度で右折、その左側面前部へ直進の自動二輪を衝突させ、25歳男性を外傷性脳損傷などで死亡させたのだという。
 典型的な右直(うちょく)事故だ。

 私は昔、オートバイ乗りだった。
 オートバイは前面の面積が小さいため、対向車からは速度が読みにくく、かつ実際より遠くに見える。そこから起こる右直事故が非常に多い。法的にどっちが悪くても良くても、死傷するのは体がむき出しのオートバイのほうだ。オートバイ乗りの基本は「ケガと弁当は自分持ち」。気をつけろ!
 そのようにあちこちで何度も何度も教わった。
 とくに右折車は信号の変わり目に右折することが多い。黄色信号のとき、普段はアクセルを巻いて(※)突っ切るのだけど、対向車線に右折待ちの車両がいるときは止まろうよ、ということが身についた。 ※オートバイのアクセルは右ハンドルグリップを手前に巻いて開けるようになっている。

検察官 「ドライブレコーダーの…衝突…被告人車両は大きく傾き…」

 なにぃ、普通乗用車を衝撃で大きく傾けるって、被害者の自二はどんだけスピードを出してたんだ?

検察官 「被告人…前科がない…保険により賠償…母親が公判廷で…を約束…そこで求刑です」

 求刑は禁錮10月だった。
 死亡事故で求刑が10月ってかなり低い。「うわ、バイクが高速だったんだね」と私は傍聴ノートに書いた。

 13時53分、被害者の意見陳述を被害者参加弁護士が行なった。
 かつれつよく、良い声ではつらつと、徹底的に被告人を悪く言った。被害者側の速度については一切触れず。なんと空虚な有能さか、申し訳ないけど私はそう思った。

弁護士 「被告人を厳罰に処さなければ同じことをくり返すでしょう」

 なんだと、この野郎! 私はムカついた。
 こんな小娘(被告人)を有罪にして満足するお前らが、右直事故が当たり前に起こる事故であることを結果として隠し、右直事故により進路をそれた車両が歩道で信号待ちをしている“柔らかな命”を奪う事態を、これからも招き続けるのだ!

 続いて弁護人が最終弁論。
 相弁護人の席にいた男性弁護人(もみあげからあごへ黒い髭)が、主任の女性弁護人のさらに裁判官席寄りに立ち、紙を見ることなく述べ始めた。裁判員裁判好きな弁護士なのだね、きっと。
 こんな部分があった。

弁護人 「甲12号証…(被害者の自二は)時速86キロから93キロのスピード…甲2号証…制限速度は40キロ…甲4号証…ドライブレコーダー…衝突の0.7秒後に赤信号になっている…3.3秒前に黄色に変わった」

 


 交通部門の警察官も検察官も持っているこの本によれば、時速90キロで車両は25m進行する。
 被害者の自二がずっと90キロの速度だったとすれば、交差点の82.5m手前で黄色になったのに止まらず、交差点に突っ込んだことになる。
 負傷ですまず死亡に到ったのは、ひとえに被害者自身の速度の出し過ぎじゃないのか。
 しかし、25歳の若い命が失われたのだし、いちおう直進優先のルールがあるので、右折車のほうを処罰しとこう、そういうことと思えた。

 若い頃の私は、オートバイでけっこうかっ飛ばした。「ケガと弁当は自分持ち」と教わっても、他人事と考えていたところがある。

今井  「うわっ、今の瞬間、大事故になって死んでてもおかしくない。助かったのは幸運としか言いようがない。おかげで今後はこのシチュエーションに注意するけれども、不運にも死んでしまう人もいるんだろうなぁ」

 そのようにひりひり思ったことが何度もある。本件の被害者は死んでしまった、そう言えるかも。
 判決期日を決めるに当たり、被害者参加弁護士が言った。

弁護士 「命日が5月26日…それ以降が良いと…」

 裁判官が5月31日を提案すると、検察官が言った。

検察官 「命日から少なくとも1週間以上いただきたいと…」

 判決は6月6日(木)11時30分からB棟301号法廷となった。
 おそらくは昨年の5月26日、25歳の若者が右直事故で亡くなったのだ。なんてこった、合掌。

──────★ 編集後記 ★───────

1、交通事故の多くは交差点及びその付近で起こる。人や車両が交差するのだから当たり前だ。
2、右折車は信号の変わり際に右折することが多い。
3、右折車は、対向直進自二が実際より遠くにいると感じ、かつその速度を見誤りがちだ。
4、直進自二と右折車との右直事故は、自二にとっては典型的な事故パターンである。
5、直進自二は信号の変わり際の交差点へ突っ込むな!
6、どっちが悪くても死傷で大損するのは自二の側だ!
7、速度が高いほど回避しにくく、かつ死傷の程度は大きくなる!

 右直事故はありふれており、自二の運転者が死亡したくらいではまず報道されない。
 報道されても、以上7つの流れにテレビ、新聞が言及することは絶対にない。たぶん、「死傷した側をムチ打つのか!」とクレームが殺到するから。そもそもそんな言及は記者クラブメディアの役割から外れるし。
 かくして、起こりやすい事故が起こり続け、失われなくていい命が失われ続ける、そういう構図が私には見える。

 あなたが自二や四輪を運転するなら、これまで以上に肝に銘じてください。
 自二や四輪を運転する方が周囲においでなら、うるさく教えてあげてください。

 4月末に332部、5月4日に328部だった発行部数は、なんと現在333部! ありがとうございます~!

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☆メールマガジン「今井亮一の裁判傍聴バカ一代」
無断転載は固く禁じます。
☆発行責任者:今井亮一
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2019年4月26日 (金)

5月,6月の神山ゼミのお知らせ

神山ゼミを以下の要領で行います。

 

【5月】

日時:5月21日(火)午後6時から午後8時頃まで

場所:伊藤塾東京校204教室

【6月】

日時:6月17日(月)午後6時30分から午後8時30分頃まで

         ※いつもより30分遅れての開始となります。ご注意ください※

場所:伊藤塾東京校204教室

https://www.itojuku.co.jp/itojuku/school/tokyo/index.html

【備考】

法曹,修習生,学生に開かれた刑事弁護実務に関するゼミです。 刑事弁護を専門にする神山啓史弁護士を中心に,現在進行形の事件の報告と議論を通して刑事弁護技術やスピリッツを磨いていきます。

特に,実務家の方からの,現在受任している事件の持込相談を歓迎いたします。

方針の相談や,冒頭陳述・弁論案の批評等,弁護活動にお役立ていただければと思います。

なお,進行予定を立てる都合上,受任事件の持込相談がある場合には,参加連絡の際にその旨お伝えください。

参加を希望される方は予めメールにて,下記の事項を松岡孝(matsuokasakuragaoka.gr.jp)までご連絡下さるようお願いします。

※スパム対策として,@を全角にしています。半角の@に変換して送信してください。

 

[件名]5月の神山ゼミ(6月の神山ゼミ)

[内容]

・氏名:

・メールアドレス:

・持込相談の事件がある場合にはその旨

皆様のご参加をお待ちしています。

 

2019年3月15日 (金)

無期雇用契約から有期雇用契約への変更や、不更新条項は同意してしまったらそれまでか?

1.無期雇用契約から有期雇用契約への同意の効力が争われた事案が公刊物に掲載されていました(熊本地判平30.2.20労判1193-52 社会福祉法人佳徳会事件)。

  この事件では、無期の正職員としての就業の開始後に、契約期間を2年間と明示している労働条件通知書・確認書に署名・押印したことの効力が争点の一つとなっていました。

2.個別合意による賃金や退職金に関する労働条件の変更に関しては

「当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても…直ちに労働者の同意があったとみるのは相当でなく、…同意の有無については当該行為を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけではなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断される」

 との判断枠組みが示されています(最二小判平28.2.19民集70-2-123 山梨県民信用組合事件)

  これは、外形的に同意があったとしても、それが自由な意思に基づいてなされたと認められるだけの合理性が客観的に担保されていなければ、同意の効力が否定される場合があるという意味です。このルールは、専門家の間では「自由意思による同意の法理」と言われることもあります。

3.熊本地裁の判決は、無期労働者と有期労働者との間には

「契約の安定性に大きな相違がある」

ことなどから、有期か無期かは

「賃金及び退職金等と同様に重要な事項であるといえる」と判示しました。

  そのうえで、上記最高裁の枠組みと同様の判断基準に従うことを示し、

「期間の定めのある雇用形態に変更した理由について、…労働者の雇用形態を配慮した変更とは考えられないこと」

「雇用形態を変更することについての不利益を原告に十分行ったと認められないこと」

「本件労働条件通知書に署名・押印しなければ解雇されると思ったためこれに署名したとする原告の供述も合理的であること」

を指摘し、

「原告が本件労働条件通知書に署名した行為は、原告の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえない。したがって、原告と被告との雇用契約を期間の定めのある雇用契約へと変更することに原告の合意があったとは認められない。」

と判示しました。

  自由意思による同意の法理が適用される場面は限られていますが、熊本地裁の判決は、無期雇用契約から有期雇用契約に変更する場面においても、同法理の適用を認めた点に意義があります。

4.この判例は、他の紛争類型でも活用できる可能性を持っています。

  例えば、以前、このブログで、

 「女性が20年働いた職場を雇止めされたケースでした。大手企業だから早くに対応も始めていて、法改正時の今から5年前、2013年の契約更新時の新しい契約書に『4月以降の通算契約期間は5年を超えないものとする』と今までなかった文言を追加したそうです。会社側は、当然のように『法律が変わって、5年を超えて更新できなくなった』と説明をして、『ここでやめるか、ハンコを押すかの二択だ』と言ったらしいです」

 との事例をもとに、有期雇用の無期転換ルールを批判する社会保険労務士の記事を紹介させて頂いたことがあります。

 https://www.mag2.com/p/news/375000

http://sakuragaokadayori.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/post-6d73.html

 20年も有期労働契約を反復更新していれば、それは期間の定めのない労働契約と同視できるはずだという議論は十分に成り立つのではないかと思います。

 この場面で不更新条項付きの有期雇用契約書に署名・押印してしまったとしても、今回の熊本地裁の判決を引用すれば、「自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえない」として不更新条項への同意の効力を否定することができるかも知れません。

  今後、同種の判例が積み重ねられるかまでは不分明ですが、熊本地裁の判決により、無期雇用契約(実質的なものも含む)を有期雇用契約に切り替えられ、その後、契約が更新されることなく雇い止めをされてしまったという場合でも、地位の回復を図ることができる可能性が、より開かれることになったのではないかと思います。

 お悩みの方は、ぜひ、一度ご相談にいらしてください。

(弁護士 師子角 允彬)

2019年3月 7日 (木)

ハラスメントに対し、適切な対応を求める権利

1.近時、従業員による知的障害者に対する暴言等と使用者責任の有無等をテーマとする裁判例が公刊物に掲載されました。

  生鮮食品・一般食品・家庭用品・衣料品等を販売するスーパーマーケットのベーカリー部門で働いていた知的障害者の原告が、同僚の従業員から「幼稚園児以下」「馬鹿でもできる。」といった趣旨の暴言を浴びせられていたことなどを理由に当該従業員及び勤務先会社に対して損害賠償を請求した事案です(東京地裁平29.11.30労判1192-67)。

  この事案で、裁判所がハラスメントが起きた場合の事後対応について、目を引く判示をしていました。

  具体的には、

 「事業主は、障害者に限らず被用者が職場において他の従業員等から暴行・暴言を受けている疑いのある状況が存在する場合、雇用契約に基づいて、事実関係を調査し適正に対処をする義務を負うべきであるが、どのように事実関係を調査しどのように対処すべきかは、各企業の置かれている人的、物的設備の現状等により異なり得るから、そのような状況を踏まえて各企業において判断すべきものである。そうすると、企業は、その人的、物的設備の現状等を踏まえた事実関係の調査及び対処を合理的範囲で行う安全配慮義務を負うというべきである。」

 という判示です。

  本件では、

 「店長としては、被告丙川及び他のベーカリー部門の従業員1名に対して事実関係を確認し、原告と他人を比べるような発言をしてはいけない旨注意をしている」こと、

 「被告丙川に注意をした上でそれでも事態が変わらない場合は、原告の配置転換やベーカリー部門の業務を切り分けるなどの対応を検討」していたこと

 などをしたうえ、結論として勤務先会社の事後対応義務違反を否定しています。

  しかし、ハラスメントの疑義に対し、事実関係を調査し、適正に対処する義務の存在を正面から認めたことは画期的だと思います。

2.裁判には立証責任というルールがあります。これは、ある事実が存在するのかしないのかが良く分からない場合、その事実をないものと同じように取り扱ってしまうというルールをいいます。ハラスメントの有無を争点とする裁判では、損害賠償を請求する側がハラスメントの事実を立証しなければならず、水掛け論になって真偽不明という状態に陥れば、ハラスメントはなかったものと同じように扱われます。

  事後対応義務は事実関係の調査義務を含むものです。ハラスメントの被害者としては、こうした義務を根拠に勤務先に調査を求めることにより、ハラスメントを受けたという痕跡を残しやすくなると思われます。また、今後の裁判例の集積をみなければ即断はできませんが、ハラスメントの事実自体が真偽不明で認定できない場合であっても、それが労働者側から申出があった適時の時期に必要な調査が行われていないことに起因する場合、そのこと自体によって一定の慰謝料を請求する根拠になる可能性を含んでいます。

3.セクハラに関しては、男女雇用機会均等法11条2項を受けた平成18年厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(最終改正:平成28年8月2日厚生労働省告示第314号)において、事業主は、

 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること、

 職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと、

 などの措置を講じなければならないとされています。

  今回ご紹介した裁判例は、セクハラだけではなく、男女雇用機会均等法11条2項のような明示的な法的根拠のないパワハラの場合においても、適切な事後対応を求める根拠となるものです。

4.「パワハラはセクハラの場合とは異なって、他の部下の面前で叱責する例も多いことから、密室性の程度がより低い場合は多いものの、被害者の立証手段が供述に限られることも多く、結局、好意の存否、態様等にかかる事実認定が困難である場合が多い」(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務,第2版,平30〕278頁)事件類型の一つです。

時の経過とともに、記憶が薄れたり、関わり合いになりたくないという気持ちが大きくなったりして、周辺第三者の供述は得られにくくなることは珍しくありません。被害直後に適切な事後調査が行われるようになることは、企業側に深刻な事態に至る前の段階での適切な対応を促したり、この種の事案における真相の解明を容易にしたりする可能性を持っています。

5.都道府県労働局等が受け付けている総合労働相談窓口コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、平成18年度には2万2153件であったものが平成28年には7万0917件と3倍以上に増え、その後も増加傾向にあります。

https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/statistics/

 直ちに損害賠償請求訴訟を提起することまでは考えていない場合でも、勤務先への事後対応の申し入れなど、弁護士が関与できる余地はそれなりにあるかと思います。

 お悩みの方は、ぜひ、一度ご相談にいらしてください。

(弁護士 師子角 允彬)

 

2019年3月 4日 (月)

芸能人の方が不当な働き方を強いられていた事件

1.近時、女性歌手の方からの相談を受けました。

  アプリケーションを通じてインターネット配信されている動画番組への出演契約を違約金なしで取り消すことができないかとのことでした。

  契約書を見てみると、

 「報酬金額:番組に関しての金銭報酬は発生しないものとする。」

 「出演依頼者の自由意思による契約であり、出演者は強制的に依頼書提出するものではない旨を確認する。」

 「連絡が取れなくなったり、出演不可となった場合は無催告解除となり直ちに製作費の損害を請求致します。」

 「出演依頼に対するメール・LINEへの返信がない場合(日程含む内容)に関して適時に連絡のない場合、協議の上、製作費の損害を請求致します。」

 「原則24時間以内の返信とします。連絡できない理由がある場合は、速やかに甲(番組制作側 括弧内筆者)への通知を要し、後日証明書類を提示しなければなりません。」

 「番組内で酩酊状態になったとしても、一切の責任は乙(出演者 括弧内筆者)とします。」

 などの文言が並んでいました。

  かみ砕いて言うと、要するに、

タダ働きをしてください、

 ただし、タダ働きを嫌だと言い出せば、番組制作費を払ってもらいます、

 当方からの連絡に対しては24時間以内に返信してください、

 返信がなければ、やはり番組制作費を払ってもらいます、

 番組では酒を飲ませますが、どれだけ酔っても自己責任です、

 あと、この契約は、あくまでも、出演者の自由意思によるという設定になっているので、そこのところ了解しておいてください、

 というものです。

ブラック企業と呼ばれるような会社でも、ここまで無茶な条件を並べて働かせているところは少ないのではないかと思います。

2.自由意思による契約だということを明記している契約書は、街弁をやっていると、それなりに目にすることがあります。消費者被害を生じさせているような会社が挿入していることの多い条項です。弁護士的な発想で言えば、このような条項を入れなければならないこと自体、公正さに欠ける契約であることを自認しているに等しいと思うのですが、問題のある契約を押し付ける側はそうは思わないようです。

  こういう胡散臭い条項から予想されるとおり、番組内容は酷いものだったようです。

  「(芸能界の)先輩やぞ。」などと言いながら飲酒を強要し、性交渉を最初にした時の状況などの性的な質問を執拗に繰り返されたとのことでした。

3.女性歌手の方が、なぜ、このような無茶な契約書を取り交わしたのかと言うと、著名企業が番組のスポンサーをしていて、宣伝になると思ったからです。

  番組はインターネットを通じて生動画で流される形式でした。番組紹介のページに著名企業の名前が掲げられていたほか、契約前に当該企業がスポンサーであると伝えられていました。

  しかし、番組の規模や内容から疑問を持った女性歌手が問い合わせたところ、当該著名企業が問題の番組のスポンサーになっている事実はないことが明らかになりました。

  端的に言ってしまえば、女性歌手の方は騙されていたのです。

4.女性歌手の方は、錯誤に陥らされて契約を結んだものであり、問題の契約は無効であると解されます。実際、スポンサーの件を問い質して交渉したところ、裁判にもならずに番組側は契約が無効であることを認めました。もちろん、違約金を請求されることもありませんでした。

5.芸能関係の方は、フリーランス・個人事業主の立場で仕事をしている人も珍しくありません。

  労働者であれば、労働基準法、労働契約法をはじめとする労働関係の法令によって保護されます。個人事業主の形式をとっていても実質的には労働者と理解されるような働き方をしている方に関しても、労働者性を争うことによって救済を図ることができます。

しかし、名実ともに雇用関係によらず、フリーランス・個人事業主として働く方を守ることは、それほど簡単ではありません。どれだけパワーバランスがとれていなかったとしても、事業者間の契約である以上、基本的には契約自由・自己責任の問題として片付けられてしまうからです。

昨年2月、公正取引委員会が「人材と競争政策に関する検討会」報告書を公表し、フリーランス・個人事業主を保護する方策として独占禁止法が注目されています。

https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index.html

しかし、独占禁止法を使って契約の私法的効力を否定することは、現実問題として考えると、非常にハードルが高いです。本件でも、本当に当該著名企業が番組のスポンサーであったとするならば、契約の効力を否定できたかは微妙なところだと思います。そう考えると、やはり、不当な契約、不合理な契約は結ばないに越したことはありません。

変な契約を結ばないことは、それほど難しいことではありません。一拍置いて弁護士に契約書をチェックしてもらえば良いのです。その場で契約書への署名・押印を迫るような相手とは契約を結ばなければ良いのです。

弁護士は色々な事案に触れて公平な契約がどういうものなのかを知っているため、変な契約は一読すれば分かります。安心して働くため、フリーランスや個人事業主の方こそ、気軽に相談できる弁護士を確保しておくことをお勧めします。

(弁護士 師子角 允彬)

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